建物の耐用年数と老朽の問題を現在の社会的通念はどのように考えているのかを、マンションの建替えをめぐって居住者間に争いが生じ、最高裁判所上告にまでいたった事件からもう少し詳しくみてみる。この事件は、平成八(一九九六)年に一部の居住者が管理組合の計画する建替え事業に反対して、提訴をおこない、平成一一(一九九九)年三月二三日に第一審判決が、その後、平成二一(二〇〇〇)年九月二八日に控訴審判決がいい渡された。
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建替えに反対する人たちは旧法第六二条一項に規定する建物の老朽と費用の過分性に関して、法的な客観条件を満たしていないとしたのであるが、第一審、控訴審ともに建替えに反対する人たちの主張を認めなかった。反対する人たちは控訴審の判決を不服として最高裁判所に上告したが、平成一三(二〇〇一)年六月八日に棄却されている。この事件での建替えを推進する人たち、反対する人たちの考え方、ならびに裁判所の判断はおおむね次のように要約できる。このマンションの建替え計画は、バブル経済の終末期に新築時の分譲主体が等価交換による建替えを持ち込んだことを発端としている。建替えを推進する人たちは、等価交換によって建物が費用負担なしに建替えられるのを前提にして、外壁などに多くのひびわれが生じ、一部ではコンクリート片が落下するなどの現象が著しく、給水管、排水管にも劣化が進行していること、さらには建物が古いために電気容量が少ないことや、洗濯機置き場がないことなどを社会的老朽化として挙げ、これらを一定の住居レベルに回復するのには過分の費用がかかるとした。