三月に入ると、職人さんの出入りが急にあわただしさを増した。一軒の家を造るのに、こんなにもたくさんの人たちが関わるということを、目の当たりする日々が続いた。家が、手をかけ、手を尽くすことを惜しまない大勢の人により、次第に完成に向かっていく過程を毎日眺めていると、感慨は深まるばかりだった。私は、その頃になって実感したことがある。それは、工務店主の存在感というものだ。それだけの大勢の手を束ねていく指揮官の大切さを納得した。
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家造りは、工務店主の理念や信条の発露のようなものであることがよく理解できた。工務店主の背中に、私はいつも「いい家を造るのだ!」という信念と情熱を感じた。そのことが、施主にとっては何よりの安心感となった。あるとき、こう尋ねたことがあった。エ務店主が一番ご苦労されることって、どんなことですか?」「苦労ですか?」とオウム返しをしてから答えた。「苦労ということではなく、工務店主はだれも同じだと思いますが、毎日手を合わせることがあります。一つは、ご近所への迷惑をできる限り少なくしたいということです。